賃貸併用住宅の新築で住宅ローンは使える?利用条件や注意点などを解説
このコラムでは、賃貸併用住宅の建築・取得資金に住宅ローンを利用するメリットや条件について解説します。アパートローン(不動産投資ローン)との比較や、住宅ローンを利用する際の注意点も紹介。
自宅の建て替えや収益物件の新築、土地活用を検討中の方は参考にしてください。
コラムのポイント
- 賃貸併用住宅の建築資金に住宅ローンを利用する場合、アパートローンよりも総返済額を少なくできる、一部に住宅ローン控除を適用できるなどのメリットがあります。
- 住宅ローンを利用して賃貸併用住宅を建てる場合、賃貸部分の収益性や地域需要等も考慮して、安定収入が得られるような経営計画を建てることが重要です。
- 賃貸併用住宅で土地活用を成功させるためには、設計段階からプロに相談し、要件を満たしつつも安定して収益を上げられる建築プランを立てることが重要です。
Contents
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するメリット
賃貸併用住宅の取得資金に住宅ローンを利用するメリットは以下のようなものがあります。
- 投資用ローンよりも融資条件が良い
- 家賃収入で返済負担を軽減できる
- 自宅部分に住宅ローン減税を適用できる
1つずつ分かりやすく解説していきますね。
①不動産投資ローンよりも融資条件が良い
金利が低く長期で借り入れができる住宅ローンは、同じ融資でも不動産投資用ローンより総返済額が少なく済みます。
賃貸物件の取得で融資を受ける場合、通常は不動産投資ローンやアパートローンを利用することになります。
不動産投資ローンは、住宅ローンに比べて金利が高い傾向があり、後述しますが構造によっては融資期間の上限が短くなるケースもあります。
住宅ローンを利用することで月々の返済額が少なくなれば、実質利回りも高くなるため、より早期の黒字化も目指せます。
②家賃収入で返済負担を軽減できる
賃貸併用住宅で建てることで、家賃収入を自宅部分のローン返済に充てられます。
通常の住宅を住宅ローン利用で建てた場合は、現在の収入だけで返済していく必要があります。
家賃という収入源が増えることで、返済負担を軽減した上でマイホームを取得できる点もメリットと言えるでしょう。
③自宅部分に住宅ローン控除(減税)を適用できる
住宅ローンの融資を受けて賃貸併用住宅を建築した場合、要件を満たせば住宅ローン控除(減税)が受けられます。
住宅ローン控除(減税)とは、住宅及びその家が建つ土地の購入のために住宅ローンを利用した場合、毎年のローン残高の0.7%を、最大13年間所得税から控除する制度です。
ただし、賃貸併用住宅の場合、控除の適用はローン残高全てではなく自宅部分のみになる点には注意が必要です。
例えば5,000万円の住宅ローン融資を受けて、自宅部分が50%の賃貸併用住宅を建てた場合は、2,500万円が控除額計算の対象となります。
部分的ではあるものの、減税によって建築費用の負担を軽減できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
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住宅ローンと不動産投資ローン(アパートローン)との違い
住宅ローンと不動産投資ローン(アパートローン)を比較した違いについて、もう少し詳しく解説します。賃貸併用住宅の取得にどちらを利用すべきか検討する際の参考にしてください。
住宅ローンよりも金利が高い
不動産投資ローンは住宅ローンよりも金利が高く設定されているため、月々の返済額・総返済額が大きくなる点がデメリットです。
住宅ローンは2024年10月時点で変動金利が0.4%前後となっています。
一方で、不動産投資ローンの変動金利はメガバンクで変動金利1~2%、地方銀行で2%~10%、ノンバンクで3%〜6%と住宅ローンよりも高くなっています。
建物構造によって借入期間上限が変わることがある
アパートローンは建物構造などの条件によって借入期間が短くなる可能性があります。
住宅ローンの場合、完済時年齢は80歳未満で最長借入期間は35年が一般的です。
一方、アパートローンの場合は、個人の条件に加えて、融資対象の建物の構造によって異なる借入期間を設定している場合があります。
〈物件の構造による借入期間条件の一例〉
- 木造…25年以内
- 軽量鉄骨…30年以内
- 鉄筋コンクリート…35年以内 など
借入期間が短くなると、その分月々の返済負担が増えることになるため、キャッシュフローが悪化しないよう、より綿密な資金計画を建てる必要があるでしょう。
団体信用生命保険への加入は任意
アパートローンでは、団信への加入は任意であることが多いため、加入しない場合は個人でリスク対策を取る必要があります。
一方、住宅ローンを利用する場合は、必ず団体信用生命保険(団信)へ加入する必要があります(フラット35は任意加入)。
団信に加入すると保険料が金利に上乗せされて返済負担が増えますが、万が一死亡や病気で返済できなくなった場合のリスクに備えられます。
保証人が必要な場合がある
アパートローンでは連帯保証人が必要な金融機関もあります。
住宅ローンの場合は、ペアローン(夫婦で相互に連帯保証人になる場合)などを除けば、ローン保証料を支払えば保証人は不要というケースがほとんどです。
保証人を付けることが難しい場合、金融機関やローン商品の選択肢が狭まってしまう可能性があります。
賃貸併用住宅取得で住宅ローンを利用するための条件
賃貸併用住宅の取得で住宅ローンの利用が可能な金融機関は「自宅部分が建物の延床面積の50%以上であること」が条件となっていることがほとんどです。
また参考として、2024年10月時点では、フラット35は賃貸併用住宅には利用できないことになっています。
(参考)住宅金融支援機構フラット35ホームページ|一部分を店舗や事務所として利用するような住宅(内部で行き来できるもの)は融資の対象になりますか。
住宅ローンを利用して賃貸併用住宅を建てるなら、2階を自宅、1階を賃貸物件にするなどの方法で、条件を満たすように設計する必要があります。
賃貸併用住宅に住宅ローンを利用する際の注意点
賃貸併用住宅の建築や取得にあたって、住宅ローンの利用を検討する際に知っておきたい注意点をまとめます。デメリットも踏まえた上で適切な方法を選ぶ際の参考にしてください。
借入上限(限度額)が低い傾向にある
住宅ローンはあくまでマイホーム取得用のため、不動産投資ローンと比べて融資を受けられる上限額が低い傾向があります。
住宅ローンの借入可能額はフラット35が8,000万円まで、民間金融機関は1~3億円程度が目安です。
一方で不動産投資用ローンの借入可能上限額は金融機関によって1億円~10億円程度と幅があるため、選択条件によってはかなり大きな金額の融資を受けることも可能です。
ただし、ローンは誰でも上限額まで借りられるわけではなく、契約者の収入に対する返済額の割合(返済負担率)によって借入限度額が決まっている点には注意が必要です。
多くの金融機関で決められている返済負担率は以下のようになっています。
- 年収400万円未満の場合…年収の30%まで
- 年収400万円以上…年収の35%まで
例えば年収が600万円で返済負担率35%、変動金利(0.375%)で35年の住宅ローンを組む場合、借入限度額は約6800万円になります。
選択できる金融機関の制限があることも
建築を依頼するハウスメーカーによっては、ローンを組む提携金融機関が決まっているケースがあります。
ハウスメーカーを検討する際は、ローンを組む金融機関を自分で選べるか事前に確認しておくことをおすすめします。
ただし、提携金融機関を利用することで優遇金利が適用されるケースもあるため、選べないことが必ずしもデメリットになるわけではありません。さまざまな条件をよく比較した上で決定しましょう。
収益性をしっかり検討する必要がある
住宅ローンはさまざまなメリットがありますが、利用条件を満たすために賃貸併用住宅の自宅部分を増やした結果、安定経営できる収益性が得られるかどうかはしっかり検討する必要があります。
不動産投資ローンを利用するなら、自宅部分の割合を50%以上にする必要がないため、より収益性の高いプランニングを実現しやすいでしょう。
賃貸併用住宅で自宅部分50%の条件が満たせない場合、自宅部分と賃貸部分で区分登記して、自宅部分は住宅ローン、賃貸部分は不動産投資ローンを利用するという方法もあります。
ただし、2つのローンを組むことで登記費用やローン手数料も多くかかる点には注意が必要です。区分登記によって発生するコストも踏まえた上で、メリットが大きいかどうかを判断する必要があります。
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まとめ
賃貸併用住宅の建築資金に住宅ローンを利用する場合、アパートローンよりも総返済額を少なくできる、一部に住宅ローン控除を適用できるなどのメリットがあります。
ただし、賃貸物件部分の面積やプランニングに制限が出てしまうというデメリットも理解しておく必要があります。賃貸物件の収益性や地域需要等を考慮して計画しなければ、期待した安定収入が得られない可能性があります。
賃貸併用住宅で土地活用を成功させるためには、設計段階からプロに相談し、要件を満たしつつも安定して収益を上げられる建築プランを立てることが重要です。
確実性の高い経営計画を組めれば、家賃収入でローンを返済して少ない負担で不動産物件を得ることも可能です。賃貸併用住宅を検討する際は、必ず住宅・賃貸両方の実績がある地元の会社に相談してください。
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