アパートの建て替えタイミング・築年数は?|建て替えの流れと費用相場、立ち退き交渉をスムーズに進めるコツも
このコラムでは、アパートの老朽化や空室率増加などの理由から建て替えを検討している方のために役立つ情報をまとめています。
アパートの建て替えを検討すべき築年数やタイミング、建て替えの流れと費用目安などを詳しく解説。
建て替えにあたってほぼ必須になる入居者の立ち退き交渉をスムーズに進める手順や立ち退き料相場なども紹介します。
家賃収入が減っているのに修繕費がかさんでいるなど収益性の悪化でお悩みの方や、次世代により良い形でアパートを引き継ぎたいとお考えの方は参考にしてください。
コラムのポイント
- 木造や軽量鉄骨造アパートの建て替えを検討するタイミングは「築25~30年前後」が目安です。
- アパートの建て替えを決定する際は、空室率・修繕費をはじめとした収益状況や建物状態、今後の運用計画などを踏まえて総合的に判断する必要があります。
- 建て替えにあたっては新築工事の他に、既存アパートの解体や入居者への立ち退き交渉、立ち退き料の支払いなどが発生するため、余裕を持ったスケジュールと緻密な資金計画が重要です。
Contents
アパートを建て替えるメリット
収益性が改善する
アパートを建て替えることによって物件の価値を高めれば、現在よりも高い家賃で運用でき収入を増やせます。
また、建物が新しくなれば、当面の大規模な修繕費用の支出も減るため、キャッシュフローの改善が期待できます。
建物の安全性や省エネ性能を高め長く運用できる
アパートを新しく建て替えることで、耐震性能や火災への強さを高め、安心して住める賃貸物件を提供できます。
また、断熱性・省エネ性の高いアパートであれば、光熱費などの維持費を抑えることにもつながり、安定して長く運用しやすくなります。
節税対策に役立つ
建物を新築すると、構造に応じて減価償却期間が生まれます。減価償却期間中は建築費用を経費に計上できるため所得税を節税できます。
また、建て替えで融資を受けた場合、ローン借り入れ分はマイナスの財産として相続税の課税評価額から差し引かれます。さらに、建て替えによって空室率が改善すれば相続税評価額を低くできるため、将来の相続税の節税対策に役立ちます。
アパート建て替えのデメリット
まとまった費用が必要
アパートの建て替えは、リフォーム等と比較すると費用が多くかかります。
構造や規模などによっても変わってきますが、アパートの建て替えには数千万円のまとまった資金が必要になります。
さらに、建て替え中は家賃収入が得られないため、一時的にキャッシュフローが悪化する可能性があります。
立ち退き交渉でトラブルになる可能性がある
アパートを建て替えるには、入居者に一時的に退去してもらう必要があります。
貸借人都合ではない立ち退きにあたっては、新居への引っ越しや敷金・礼金などに充てるための立ち退き料が必要なケースが多くなっています。
また、全ての入居者がすぐに立ち退きに納得してくれるとは限りません。場合によっては立ち退きへの同意が得られずトラブルに発展したり、計画が思ったように進められなくなったりする可能性もあります。
アパートの建て替えを検討すべき築年数やタイミング
アパートを建て替えるかどうかは、収益状況や建物状態、今後の運用計画などを踏まえて判断します。
〈建て替えを検討すべきタイミング〉
- ・空室率が増加して収益が減っているのに、修繕費用は増加しているなど、キャッシュフローが悪化している
- ・築年数が経過し建物の劣化が目立つ、安全性に不安がある
また、アパートの減価償却期間が終了し節税効果が切れるタイミングで、建て替えを検討するのも1つの目安となります。
〈住宅の減価償却資産の耐用年数〉
- 木造…22年
- 鉄骨造…
骨格材の厚み4mm超(重量鉄骨造含む)…34年
骨格材の厚み3mm超4mm以下(軽量鉄骨造)…27年
骨格材の厚み3mm以下(軽量鉄骨造)…19年- RC造…47年
以上を踏まえると、木造や軽量鉄骨造アパートの建て替えを検討するタイミングは「築25~30年前後」が目安と言えます。
アパートを購入・建築時のローン借入期間は減価償却期間を踏まえて設定することも多いため、残債が終了または少なくなっていれば、建て替えが検討しやすくなります。
アパート建て替えの流れ
アパートの建て替えにあたって、建物のプランニングから入居者への対応、解体、着工、引き渡しまでの流れを分かりやすくまとめます。
建て替えプランの計画を立てる
アパートを建て替える目的を明確にし、具体的な建て替えプランを計画します。具体的には、現在の収益性の確認、建て替え後の収支のシミュレーションを実施し、建物の仕様や工事までのスケジュール、立ち退き料の予算などを決めます。
新規募集の停止や立ち退き交渉にかかる期間も考慮し、建て替えの2~3年前には計画を立てることをおすすめします。
建て替えの理由や、新しい住まいがどのように変わるのかを明確にしておくことは、立ち退き交渉にあたって入居者に納得してもらう材料にもなります。
新規入居者の募集を止める
建て替え期間中は新規入居者の募集をストップします。
立ち退きまで期間が空く場合は、「定期借家契約」で入居者を募れば、短い間でも家賃収入を得られます。
立ち退き交渉
建て替え計画が決定したら、入居者に立ち退きを通知し、退去日や立ち退き料などの交渉を進めます。
アパートの立ち退き(賃貸借契約の解約)の申し入れについては、入居者保護の観点から、借地借家法第28条によって「正当事由」が必要であると定められています。
「正当事由」に該当する主なケース
- 建物が老朽化していて建て替えが必要
- 再開発の影響で取り壊し(移転)が必要
- 入居者の契約違反
ただし、単に建物が劣化しているというだけで、正当事由として入居者から理解が得られるとは限りません。旧耐震の建物で早急に耐震改修が必要、実際に事故が起きる恐れがあるなど、具体的な理由を示して理解を得ていく必要があるでしょう。
普通借家契約で貸主側の都合による退去を求める際は、借主の損害を補填するための「立ち退き料」を支払うことが通例となっています。
立ち退き料が必要なケース | 立ち退き料が不要なケース |
---|---|
|
|
立ち退き交渉の具体的な流れを簡単に解説します。
①入居者への立ち退き通知(退去日の6か月~1年前)
入居者への立ち退き申し入れはできるだけ早く、最低でも6か月前までには通知しましょう。
一般的には、立ち退き理由や時期、立ち退き料などを明記した覚書などの私書を作成して送付します。
また、建て替えを決定するに至った経緯や理由、入居者への感謝などを誠実に伝えることも大切です。
②立ち退き交渉(退去日の4~5か月前)
立ち退きの申し入れについて納得を得られない場合は、双方による話し合いが必要です。
立ち退きを要請する理由を説明し、入居者の事情や立ち退き料の金額、立ち退き時期などの条件について要望を聞き取り、納得が得られるまで交渉します。
場合によっては建て替えの間の引っ越し先を紹介するなど、入居者の状況や要望に応じて臨機応変に対応していくことも必要になります。
③立ち退き開始
全ての入居者から納得が得られれば、実際に立ち退きへと移り、立ち退き料を支払います。
立ち退き料は「決められた期日までに退去した場合に支払う」などの条件を定めておくとスムーズです。
立ち退き交渉については、アパートの建て替えを依頼する施工会社に進め方も含めて相談するのがおすすめです。
既存アパートの解体
入居者の立ち退きが完了次第、既存アパートの解体工事に移ります。解体工事期間は2週間~1か月程度を見込んでおきましょう。
近隣トラブルを防ぐためにも、解体工事前に近隣への挨拶回りを済ませておくのがおすすめです。
アパート新築工事請負契約・ローン契約
入居者立ち退きの目処が立ったら、建て替えるアパートの建築工事請負契約や、ローン本契約の申し込みを進めます。
アパートの着工
契約を結んだら、プランに従ってアパートの新築工事を開始します。既存建物の解体とアパート新築の両方に対応可能な会社に依頼するとスムーズに進められます。
アパート新築の工期は階数+1か月が目安で、木造2階建てアパートなら3か月程度です。
ただし、構造や敷地条件による工期の違いや外構工事なども踏まえて、余裕を持って4~6か月程度かかると見越して計画しておいた方が安心です。
工事完了(竣工)・検査・引き渡し
アパートが完成したら、施主検査を実施し引き渡しになります。希望通りの仕様や設計になっているか、傷などの不具合がないかなど、細かい部分までしっかりとチェックしましょう。
アパート建て替え費用の内訳と相場
アパート建て替えにはおもに3種類の費用が発生します。
- ①立ち退き料
- ②既存アパート解体費用
- ③アパート建築費用
1つずつ相場を解説していきます。
①立ち退き料
立ち退き料の金額は法律による定めがあるわけではなく、通例として一世帯あたり家賃の6か月~12か月分程度が相場となっています。
立ち退き料は引っ越し代や新居の賃貸契約時の初期費用はもちろん、入居者の事情も考慮して退去による不利益分を補える金額を算出していくため、実際の金額はケースバイケースになります。
〈立ち退き料の主な内訳〉
- 引っ越し代 ・新居賃貸契約時の敷金や礼金
- 新居賃貸契約時の仲介手数料
- 新居の家賃との差額分(家賃が上がる場合)
- インターネット回線の移転費用(2万円程度)など
②既存アパートの解体費用
アパートの構造別の解体費用相場は以下の通りです。
- 木造:4〜6万円/坪
- 鉄骨造:7〜8万円/坪
- 鉄筋コンクリート造:8〜9万円/坪
延べ床面積80坪の木造アパートなら、解体費用は320万円~480万円程度が相場になります。
ただし、アパートの解体費用は、構造や立地条件によって費用帯にかなりの幅があります。敷地や周辺の道路幅が狭く重機が搬入できない場合、人件費がかさむためトータルコストが高くなりやすい傾向にあります。
なお、解体費用はローンに組み込めないケースが多いため、早めに見積もりを取って金額を把握しておきましょう。
③建築費用
アパートの建築費用は、構造や規模によって変わります。
2023年度の建築着工統計調査によると、住居専用住宅の構造別平均坪単価は以下のようになっています。
住居専用住宅の平均坪単価(2023年度)
- 木造…約68万円
- 鉄骨造…約98万円
- RC造…約100万円
(出典)建築着工統計調査を基に弊社集計
統計を元に、延べ床面積60坪のアパートを建てる場合の費用をシミュレーションすると以下のようになります。
- 木造:68万円 × 60坪 = 4,080万円
- 鉄骨造:98万円 × 60坪 = 5,880万円
- RC造:100万円 × 60坪 = 6,000万円
また、アパートの本体工事費の他に、別途工事費(本体工事費の1〜2割程度)やローン保証料、抵当権設定登記費用などの諸費用も見積もっておく必要があります。
〈おすすめコラム〉
アパートを建てる費用はいくら?建築相場と必要な自己資金を解説
アパート経営の初期費用相場|土地ありで新築と中古アパート購入の自己資金目安をシミュレーション
アパート建て替えで使えるローン
アパートの建て替えにはトータルで数千万円もの費用がかかることもあるため、融資を受けるケースも多くなるでしょう。
投資用アパートの建て替え時には「アパートローン」が利用できます。
〈アパートローンの特徴〉
- 審査時に物件の収益性や資産性なども考慮される
- 住宅ローンよりも金利が高く返済期間が短い
- 担保となる物件の評価によって融資額が制限されるケースがある
- 構造によって返済期間が変わるケースがある
アパートローンの審査では、年収など個人の属性の他に物件の収益性や資産性なども考慮されます。
審査に通りやすくするためには、自己資金を増やす他、事業計画書等で収益性の見込みを具体的に明示できれば、好条件で融資が受けられる可能性もあります。
自分の融資条件でどのようなアパートを建築できるか、また自己資金の適切な割合は、不動産会社や建設会社、金融機関と相談しながら検討しましょう。
まとめ
木造や軽量鉄骨造アパートの建て替えを検討するタイミングは築25~30年前後が目安です。
アパートの建て替えを決定する際は、空室率・修繕費をはじめとした収益状況や建物状態、今後の運用計画などを踏まえて総合的に判断する必要があります。
建て替えにあたっては新築工事の他に、既存アパートの解体や入居者への立ち退き交渉、立ち退き料の支払いなどが発生するため、余裕を持ったスケジュールと緻密な資金計画が重要です。
オカムラホームは、アパートの建て替えからその後の賃貸経営サポートまでご相談いただける総合住宅会社です。
建て替えアパートの設計・施工、解体工事・立ち退き交渉のアドバイス、アパートローン利用のための事業計画書作成、完成後の経営・維持管理まで、自社内でワンストップサポートします。お気軽にご相談ください。