相続した空き家の売却でかかる税金は?計算方法や「空き家特例」を活用した節税方法も解説

相続空き家の売却でかかる税金の種類と計算方法

このコラムでは、空き家を売却したときにかかる「譲渡所得税」などの税金の種類や計算方法について解説します。

また、相続した空き家を売却した際の節税に効果的な「空き家特例」の内容や、活用時の注意点も分かりやすく解説します。空き家を相続した、またはこれからする予定の方は参考にしてください。

 


コラムのポイント

  • 相続した空き家を売却する際には、売却して出た利益に応じた譲渡所得税や印紙税、必要に応じて登録免許税を納める必要があります。
  • 譲渡所得税は「空き家特例」を活用することで大きな節税効果を得られます。空き家特例は適用要件が複雑なため、地元に精通する不動産会社に相談するのがおすすめです。

 

最適な土地活用

 

空き地の売却時にかかる税金の種類

相続した空き家を売却する際の税金

譲渡所得税・住民税

空き家を含めた不動産を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」と「住民税」がかかります。

譲渡所得税は、不動産を売却した金額そのものにではなく、以下によって算出される「譲渡所得」に対して課税されます。

 

①収入金額 - ( ②取得費 + ③譲渡費用 ) - ④特別控除額 = ⑤課税譲渡所得金額

 

①~⑤それぞれの金額について簡単にまとめると以下のようになります。

①収入金額 不動産を売却した代金
(売却時の固定資産税・都市計画税の精算金も収入金額に含まれる)
②取得費 不動産を購入する際にかかった金額の合計
(不動産の購入金額やその際に支払った仲介手数料)
③譲渡費用 不動産を売却するためにかかった費用
(仲介手数料や売買契約書に貼る印紙代など)
④特別控除額 一定の要件を満たす場合に適用される控除額
⑤課税譲渡所得金額 課税の対象になる金額

 

(参考)No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

つまり、空き家を売却して得た収入から、購入時・売却時それぞれにかかった諸費用と特別控除を引いた⑤の課税金額に対して税率を掛けると譲渡所得税が計算できます

譲渡所得税の税率や具体的な計算方法については次章で詳しく解説します。

 

印紙税

印紙税は、不動産売買契約書について納める税金です。売買契約締結時に収入印紙を契約書に貼付し、印鑑などで消印することで納税します。

なお、不動産売買契約書の印紙税は、令和9年3月31日までは記載金額が10万円を超える場合に以下の表の通り軽減税率が適用されます。

契約金額 本則税率 軽減税率
1万円未満 -(非課税) -(非課税)
10万円以下 200円 200円(軽減なし)
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1千万円以下 1万円 5,000円
1千万円超5千万円以下 2万円 1万円
5千万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円

 

(参考)不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

 

登録免許税

登録免許税とは、不動産登記の際に課される税金です。

空き家の売却時には抵当権の抹消手続きや住所変更登記などが必要なケースがあります。それぞれの手続きにかかる登録免許税は以下の通りです。

登記の種類 手続きが必要なケース 登録免許税
抵当権抹消登記 売却する空き家に抵当権が設定されている場合(ローンで購入した家など) 1つの不動産につき1,000円
(空き家の場合、土地・建物それぞれの合計で2,000円)
住所変更登記 空き家所有者の住所が登記簿上と実際の住所が異なる場合  1つの不動産につき1,000円
(空き家の場合、土地・建物それぞれの合計で2,000円)

 

(参考)
住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)|法務局
登記されている住所・氏名に変更があった方へ (住所変更登記・氏名変更登記の申請手続のご案内)|法務局

なお、抵当権抹消登記や住所変更登記を司法書士へ依頼する場合は別途報酬を支払う必要があり、相場は10,000〜20,000円になります。

 

 

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税の計算方法

次に、譲渡所得税の具体的な計算方法をチェックしましょう。譲渡所得は、空き家を所有していた期間によって長期譲渡所得短期譲渡所得の2つに区分され、それぞれ税率も異なります。

 

譲渡所得税の税率

譲渡所得の種類 譲渡所得税率 住民税率
長期譲渡所得
(譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える)
15% 5%
短期譲渡所得
(譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下)
30% 9%

 

※2037(令和19)年までは、「復興特別所得税」として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付する必要があります。長期譲渡所得の復興特別所得税率は15%×2.1%=0.315%、短期譲渡所得の税率は30%×2.1%=0.63%となります。

 

上記のように、空き家を所有していた期間が5年以下だと税率が高くなります。

相続した空き家の所有期間はどうなる?

相続によって取得した不動産については、被相続人の取得時期がそのまま相続人に引き継がれます

以下の具体例で見てみましょう。

  • 空き家は被相続人である父親が2000年4月に購入した家
  • 相続人である子が2020年4月に空き家を相続した
  • 子が空き家を売却したのは2024年4月

上記ケースでの所有期間は、父親が購入した2000年から子が売却した2024年の1月1日までの24年となり、長期譲渡所得の税率が適用されます。

 

(参考)
No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁
No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期

 

相続空き家の売却時に適用できる「空き家特例」

空き家特例とは、被相続人のマイホームを相続した場合に適用できる特別控除のことで、正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と言います。

いくつかの要件はあるものの、相続した空き家を3年後の12月31日までに売却して得た譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除されるため、結果的に大きな節税効果を得られます。

(参考)No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

〈関連コラム〉

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譲渡所得税のシミュレーション

以下の条件で譲渡所得税額をシミュレーションしてみましょう。

  • 所有期間15年以上の相続空き家を売却
  • 課税譲渡所得1,000万円

 

上記のケースでは、15年以上所有している空き家なので長期譲渡所得の税率が適用されます。

譲渡所得1,000万円に、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税率の合計20.315%を掛けると税額は以下のように計算できます。

税額 = 1,000万円 × 20.315% = 203.2万円

 

 

空き家特例を活用すると税金がかからないケースも

上記の条件で「空き家特例」が適用できた場合、譲渡所得が控除額の3,000万円以内なので税金はかかりません

相続した空き家を売却する際は、特例を上手に活用して節税につなげましょう。

オカムラホームでは、各種税制優遇も活用した相続空き家の売却をサポートいたします。

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相続空き家売却時の税金を抑えるポイント

相続空き家の売却時の税金を抑えるポイント

最後に、相続した空き家売却の税金を抑えるために知っておきたいポイントをまとめます。相続発生前に対策しておくことで税負担を軽減できる可能性もありますので参考にしてください。

 

空き家特例の適用条件や期限に注意する

空き家特例を活用したい場合は、事前に必ず適用条件や期限を確認しておきましょう。

例えば、空き家特例を適用できるのは建築が昭和56年5月31日以前の物件に限られるため、相続した家の建築年数が浅いと特例は受けられません

また、特例を適用できる期間は相続開始日の翌日から3年を経過する日の属する年の12月31日までとなっています。令和6年7月10日に亡くなった人が所有していた不動産を相続した場合、空き家特例を適用させるためには令和9年12月31日までに売却する必要があります。

空き家特例の手続きには以下のような書類も必要になるため、相続が発生してから慌てないようにできる限り事前に準備しておくことをおすすめします。

 

〈空き家特例手続きの主な必要書類〉

  • 譲渡所得の内訳書
  • 土地と建物の登記簿謄本
  • 管轄市町村の被相続人居住用家屋等確認書
  • 売却代金1億円以下を証明する売買契約書の写し
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震改修の場合)

 

空き家の「取得費」を事前に調べておく

譲渡所得税額の算出にあたって、空き家の取得費が分からない場合は、売却価格の5%が取得費とみなされるため、譲渡所得の金額が大きくなり結果的に税負担が大きくなってしまう場合があります。

(参考)No.3258 取得費が分からないとき|国税庁

相続した実家を売却する場合、親が購入した際の契約書類等が見つからないことが多く、想定していた以上の税金を支払うことになってしまったというケースもあります。

空き家の相続を予定している場合は、相続前に建物や土地の売買契約書など、重要書類の保管場所などを確認しておくことをおすすめします。

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まとめ

相続した空き家を売却する際には、売却して出た利益に応じた譲渡所得税や印紙税、必要に応じて登録免許税を納める必要があります。

譲渡所得税は「空き家特例」を活用することで大きな節税効果を得られます。ただし、空き家特例は適用要件が複雑なため、ご自身のケースに適用可能かどうかも含め、地元に精通する不動産会社に相談するのがおすすめです。

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