定期借地権のメリット・デメリットとは?種類別にわかりやすく解説

定期借地権のメリット・デメリットとは?種類別にわかりやすく解説

空地を活用したいけど初期投資は抑えたい、そのような場合は定期借地権で貸し出すのも一つの選択肢です。

定期借地権は初期投資を抑えて長期的に安定した収入を得られ、必ず土地を返還してもらえるのが特徴。ただし存続期間が長い、利益が小さいなどのデメリットもあるため、土地の価値や状況に合わせて検討する必要があります。

今回は定期借地権の基本的な種類、オーナー様の立場から見たメリット・デメリットなどを詳しく解説します。


コラムのポイント

  • 3種類の定期借地権それぞれの存続期間、返還条件などを詳しく確認しましょう。
  • 定期借地権の地代相場は、更地価格の3~6%(年額)です。

定期借地権とは?

定期借地権で貸し出す土地

定期借地権は借地借家法第四節で規定されていて、事前に決められた期間だけ建物を建てて土地を使える権利のことです。

旧借地法で規定される借地権では、借地人の権利が強く保護されていました。借地権の期間が満了しても更新することが可能で、正当な理由がない限り地主の都合で契約を終了させることができません。つまり半永久的に土地を使えるため、地主の立場としては厳しい状況でした。

そこで1992年(平成4年)8月に借地借家法が施行され、定期借地権がつくられたのです。定期借地権は契約更新が無く、建物買取請求権を認めない特約を結べるなど、従来の借地権より地主側の権利が強くなっています。

定期借地権の概要を詳しく知りたい方はこちら

▼定期借地権とは

定期借地権の種類と特徴

定期借地権には次の3つの種類があります。

一般定期借地権 事業用借地権 建物譲渡特約付借地権
存続期間 50年以上 10~30年 30年以上
建物の用途 自由 事業用に限る 自由
契約更新 なし 30年未満:なし

30年以上:任意

なし
土地の返還方法 借地人が更地にして返還 借地人が更地にして返還 地主が建物を買取り借地権が消滅
契約方法 書面 公正証書 公正証書

定期借地権の種類によって契約期間や特約内容が異なります。マンションなどの住宅は一般定期借地権、店舗や事務所などは事業用定期借地権が利用されるケースが多いです。それぞれの詳しい特徴を解説します。

一般定期借地権

一般定期借地権のイメージ

一般定期借地権は借地借家法第22条で次のように規定されています。

存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第1項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。

引用元:e-gov法令検索 借地借家法

一般定期借地権の存続期間は50年以上で、契約の更新や延長はなく、満了時には更地で返還されます。契約を新たに結び直すことは可能ですが、義務ではないため地主の都合で断ることが可能です。

土地の利用制限はなく、借地人が自宅や事業用の建物などを自由に建築することができます。一般的にはマンションや戸建て住宅など、住居用途で利用されることが多いです。一般定期借地権は必ず書面で契約する必要があり、口頭契約は無効となります。

事業用定期借地権の特徴

事業用定期借地権は借地借家法第23条で次のように規定されています。

専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。

2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。

3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

引用元:e-gov法令検索 借地借家法

店舗や倉庫、事務所など事業目的のための定期借地権で、住居を建てることはできません。存続期間は10年以上50年未満と一般定期借地権より短く、期間によって内容が異なります。

事業用定期借地権10年以上30年未満の場合

※10年以上30年未満の場合

  • 建物買取請求権がない
  • 更地にして返還

存続期間10年以上30年未満の場合は、一般定期借地権と同じように建物買取請求権が無く更地にして返還する必要があります。

事業用定期借地権30年以上の場合

※30年以上50年未満の場合

  • 建物買取請求権・契約の更新は任意

しかし存続期間30年以上の場合、建物買取請求権と契約更新は当事者同意で任意に決めることが可能です。

建物譲渡特約付借地権の特徴

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、借地借家法第24条で次のように定められています。

借地権を設定する場合(前条第2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第9条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。

2 前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の借地人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の借地人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。

3 第1項の特約がある場合において、借地権者又は建物の借地人と借地権設定者との間でその建物につき第38条第1項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う

引用元:e-gov法令検索 借地借家法

建物譲渡特約付借地権の存続期間は30年以上で、契約満了時に建物を地主が買取る特約が含まれています。期間満了と同時に建物の所有権が地主に移り、借地人が住み続けたい場合は賃貸契約に移行することが可能です。建物譲渡特約付借地権の契約も公正証書に基づいて結ぶ必要があります。

定期借地権の地代相場は?

定期借地権の地代相場

定期借地権の地代は、相当地代に基づき決定されるケースが多いです。相当地代は更地価格の6パーセントが目安と言われています。仮に時価3,000万円の土地で定期借地契約を結ぶ場合、年間180万円が地代の相場になるということです。

参照元:国税庁 相当の地代及び相当の地代の改訂

ただし6パーセントという数字はあくまで目安で、店舗や事業利用なら4~5パーセント、マンションやアパート住宅利用では2~3パーセントに設定されることもあります。相当地代はあくまで目安であり、契約内容によって変動するということです。

定期借地権のメリット

定期借地権の土地に建つ賃貸住宅

定期借地権契約で土地を貸し出すことは、オーナー様にとって次のようなメリットがあります。

一定期間で土地を返還してもらえる

定期借地権はあらかじめ設定した存続期間が満了した後、必ず土地を返還してもらえるのが大きなメリットです。通常の借地権では、地主側に正当な理由がない限り更新を拒否できず、半永久的に土地を返還してもらえません。一方定期借地権は更新がないため、存続期間満了時に必ず土地が返還されます。返還されるタイミングが明確なので、次の活用や売却を考えやすいのも特徴。

長期間安定した地代収入を得られる

定期借地権の存続期間中は、ずっと安定した地代が入ってくるのもメリットと言えます。

賃貸経営の場合空室期間中は収入が発生しませんが、定期借地権の場合途絶えることはありません。安定した収益が続くため、経営計画を立てやすいです。

建物の建築費用が不要

定期借地権では借地人が建物を建築するため、オーナー様は初期費用を抑えられるのも魅力的なポイントです。現金の持ち出しや金融機関からの借入をせずに、土地を活用することが可能です。

承諾なしで売却・転貸されない

定期借地権は地主の承諾なしに売却や転貸ができないため、勝手に借地人が変わる可能性がないのも大きなメリットです。権利関係が複雑になったり、土地を不法占拠されたりするリスクが少ないです。

更地で返還されるため次の活用を検討しやすい

建物譲渡特約付借地権を除いて、借地人が更地にしてから返還してもらえるのも定期借地権のメリット。建物を解体する費用や手間がかからないため、すぐに次の活用を始めることができます。一般定期借地権と事業用定期借地権は建物買取請求権がないため、返還時の出費もありません。

維持管理費用・手間が不要

定期借地権の建物は借地人が維持管理するため、オーナー様は特別なランニングコストがかからないのもうれしいポイントです。自分でアパートやマンションを建てる場合、外壁・屋根塗装などのメンテナンスコストが発生するため積立が必要となります。しかし定期借地権なら、元々支払っている税金以外のランニングコストはかかりません。

定期借地権のデメリット

定期借地権の駐車場

定期借地権はオーナー様にとって次のようなデメリットもあるため、注意が必要です。

存続期間中は土地を返還してもらえない

定期借地権は存続期間が長いため、その間土地を返還してもらえず、売却や他の活用をすることはできません。もし存続期間中に土地の価格が大きく上がっても、売却して利益を得ることはできないのです。

特に一般定期借地権は50年以上で上限が定められていないため、存続期間を慎重に考える必要があるでしょう。将来転用したり売却したりする可能性があるなら、ほかの活用方法を考えるのも一つの選択肢です。

自分で建築するより利益は小さい

前述したように定期借地権の地代は土地価格の3~6パーセント前後となるため、自分で建物を建てて運用するより利益は小さくなります。赤字になるリスクはありませんが、大きな利益も期待はできないということです。

利用価値の高い土地の場合、定期借地権で貸し出すのではなく、自分で賃貸住宅やビルを建てた方が良いケースも考えられます。

まとめ

定期借地権は地主の権利が保護されているため、普通借地権のデメリットを軽減できます。建物の建築費用や返還時の解体費用がかからないため、初期投資を抑えて土地活用したい方に向いています。ただし契約内容によっては不利になってしまうこともありますので、必ず不動産の専門家のサポートを受けてください。

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