不動産投資ローンの基礎知識|年収目安、条件、借入の流れと最適な融資を引き出す戦略を解説

「不動産投資に興味はあるけれど、資金調達(融資)の仕組みが複雑そうで不安」と感じている方もいるのではないでしょうか。
不動産は一般的に高額となるため、融資(不動産投資ローン)を適切に活用することがより効率的な投資への近道となります。
このコラムでは、不動産投資で融資を活用するメリットや審査基準、年収別の借入可能額目安、借入の流れ・必要書類などの基本知識を分かりやすく解説します。
また、不動産投資初心者の方から2棟目以降の投資家、相続対策を考える方まで、属性別の具体的な融資戦略も解説します。
コラムのポイント
- 不動産投資の成功には、物件選びと並行して、綿密な資金計画に基づいた融資戦略が不可欠です。
- 融資の仕組みや審査基準を正しく理解し、ご自身の属性と目的に合った金融機関を選ぶことが、収益性を最大化するための重要なポイントになります。
Contents
不動産投資ローンの基礎知識と融資を活用するメリット

不動産投資において、融資(ローン)を活用するメリットについて解説します。
レバレッジ効果で自己資金効率を最大化
不動産投資において融資を活用する最大の理由は、レバレッジ効果を得るためです。
レバレッジ(てこの原理)とは、少ない自己資金で大きな額の借入を行うことにより、自己資金に対するリターン(利回り)を最大化させる仕組みです。
融資を利用することで自己資金を抑えつつ、より大きな物件に投資できるため、自己資金効率の最大化と早期の資産拡大が期待できます。
手元に資金を残せる
物件購入費用のすべてを自己資金でまかなう必要がないため、現金を手元に残すことができます。
残した資金は、急な修繕費用や空室対策、さらには2棟目以降の購入といった次の投資機会への準備資金、または投資以外の緊急事態に備える流動性の高い資金として活用できます。
団信に加入でき、万が一のリスクに備えられる
不動産投資ローンでは、多くの場合で団体信用生命保険(団信)への加入が必須となります。
団信に加入していると、契約者(オーナー)に死亡または高度障害といった不測の事態が発生した場合、ローンの残債は保険金で完済されます。
万が一の場合でも、残されたご家族はローンのない収益物件を相続でき、家賃収入を得られるため、大きなリスク対策となります。
不動産投資で融資を受けると上記のようなメリットを受けられますが、借入が大きくなるほど、空室や金利上昇などのリスクも大きくなるため、リスクを想定した綿密な事業計画が不可欠です。
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不動産投資ローンの種類と住宅ローンとの違い
不動産投資ローンは、居住用の住宅ローンとは目的や審査基準が大きく異なります。
| 項目 | 不動産投資ローン | 住宅ローン |
|---|---|---|
| 目的 | 収益(事業)を目的とする | 居住(私用)を目的とする |
| 金利 | 住宅ローンより高め | 低金利(優遇措置が多い) |
| 主な審査基準 | 投資家本人の属性と物件の収益性・担保価値 | 申込者本人の返済能力(年収、勤続年数など) |
また、不動産投資ローンは大きく「有担保ローン」と「無担保ローン」に分かれます。
不動産投資の場合、収益物件を担保にする有担保ローンが一般的です。無担保ローンは資金使途が自由な反面、金利が高めで融資期間が短い傾向がある点に注意が必要です。
金融機関が独自に提供するプロパーローンや、提携不動産会社を経由するパッケージローンなどもあり、それぞれ金利や審査の柔軟性が異なるため、比較検討の上ご自身に適した商品を選択する必要があります。
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どの金利タイプを選ぶべきか?
不動産投資ローンの金利タイプには、将来にわたり金利が変わらない固定金利と、市場金利に応じて変動する変動金利があります。
- 変動金利: 当初金利は低いが、市場金利が上昇すると返済額が増えるリスクがある。
- 固定金利: 市場金利が上昇しても返済額は一定で安心だが、変動金利よりも当初金利が高いことが多い。
現在の市況やご自身の金利リスク許容度、事業計画における金利上昇リスクへの耐性などを考慮の上で選択することが重要です。
不動産投資ローンの審査基準

不動産投資ローンの審査では、「融資をしても確実に回収できるか」という観点から、以下の3つのポイントが評価されます。
① 投資家本人(属性)の評価
融資審査においては、投資家自身の返済能力と信用力が最も重要になります。
年収と勤務先: 安定した高収入であるほど有利です。特にサラリーマンは、毎月の給与が安定しているため、金融機関から高く評価される傾向があります。
- 勤続年数: 一般的に3年以上が望ましいとされます。
- 既存借入状況: 他のローン(自動車ローン、奨学金など)の残高や、クレジットカードの返済履歴(信用情報)も確認されます。
- 金融資産(自己資金): 頭金として提供できる自己資金の多さは、返済能力と熱意を示す重要な指標になります。
②物件の評価
ローンを組む際は、担保価値と収益性という2つの基準で物件が審査されます。
- 担保価値(資産価値):土地と建物の両方を対象に、「もしローンが返済できなくなった場合に、いくらで売却できるか」という資産価値を評価します。金融機関独自の計算方法(積算評価など)で算出されます。
- 収益性(事業の安定性):「物件が安定的に家賃収入を生み出せるか」を評価します。具体的には、周辺の賃貸需要、空室になりにくいか(空室率)、適正な家賃設定は可能かなどをチェックします。
法定耐用年数の融資期間への影響
物件の法定耐用年数は、融資期間に大きく影響します。残りの耐用年数が長いほど、長期の融資を受けやすくなります。
- 木造: 22年
- 鉄骨造: 19年~34年(骨格材の厚さによる)
- 鉄筋コンクリート(RC)造: 47年
法定耐用年数を超過した物件でも、収益性や土地の担保価値が優れていれば、融資を受けられる可能性は十分にあります。
また、リフォームやリノベーションによるバリューアップ計画も、物件の価値を向上させ、融資を有利にする要因となります。
③事業計画の評価
借入金の返済能力を評価するためには、投資全体の事業計画が現実的で継続可能かという点も重要な要素となります。
借入金の返済能力を評価する指標として「DCR(借入償還余裕率)」があります。
DCRは年間の純営業収益(家賃収入から諸経費を引いた利益)が、ローンの年間返済額をどれだけ上回るかを示すもので、一般的に1.2以上であることが望ましいとされます。
年収別の借入可能額と融資限度額の目安

借入可能額は、申込者の年収だけでなく、自己資金の額、購入する物件の収益性や担保価値、そして金融機関ごとの審査方針によって大きく変動します。
不動産投資ローンにおける、一般的な年収別の借入可能額と融資限度額の目安は以下の通りです。
| 年収目安(サラリーマン) | 借入可能額の目安(概算) |
|---|---|
| 500万円~700万円 | 3,000万円〜5,000万円程度 |
| 700万円~1,000万円 | 5,000万円〜8,000万円程度 |
| 1,000万円以上 | 1億円以上も視野に |
サラリーマンは安定した給与があるため、金融機関の評価が高く、特に勤務先が上場企業や公務員の場合は、有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。
まずはご自身の属性と目的に合った資金シミュレーションを行うことが重要です。
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不動産投資ローンを借りる流れと必要書類

不動産投資ローンを借りるための流れや必要書類について解説します。
事前に準備を整えることで、スムーズに審査へ進み、希望の融資を受けられる可能性を高められます。
事前審査から契約・融資実行までのステップ
物件選定と資金シミュレーション
まずは購入したい物件を選定し、不動産会社のサポートを受けながら、無理のない資金計画を立てます。
事前審査(仮審査)の申し込み
購入したい物件の目星がついたら、金融機関に事前審査を申し込み、融資を受けられるかどうかの見込みを確認します。
不動産売買契約の締結
事前審査を通過したら、売主と正式に不動産売買契約を結びます。通常、この際に手付金を支払います。
本審査申し込み
売買契約締結後、必要書類を揃えて金融機関に正式な融資(本審査)の申し込みを行います。より詳細な物件の担保評価や、個人の信用情報調査が行われます。
金銭消費貸借契約の締結
本審査に通過後、金融機関と正式なローン契約(金銭消費貸借契約)を結びます。
融資の実行と物件の引き渡し
契約で定めた日(決済日)に融資が実行され、その資金で売主に残代金を支払います。同時に物件の所有権移転登記などが行われ、鍵が引き渡されます。
不動産投資ローンの必要書類リスト
融資の申し込みでは、申込者の返済能力を証明する「本人関連書類」と、投資対象の価値を証明する「物件関連書類」が主に求められます。
| ①本人関連書類 |
|
|---|---|
| ②物件関連書類 |
|
| ③事業計画関連書類 |
|
上記の書類は金融機関や審査の段階(事前審査か本審査か)によっても異なる場合があるため、事前に申込先の金融機関に確認しておきましょう。
最適な融資を引き出すための金融機関の選び方と融資戦略のポイント

不動産投資の成功は、どの金融機関から、どのような条件で融資を受けるかに大きく左右されます。
不動産投資ローンを扱う金融機関のタイプと特徴
投資用不動産ローンを扱う金融機関のタイプによって、金利の傾向や適している属性、目的などが変わってきます。
| 金融機関のタイプ | 特徴 | 適している投資家 |
|---|---|---|
| メガバンク・都市銀行 |
|
|
| 地方銀行・信用金庫 |
|
|
| ネット銀行 |
|
|
| 日本政策金融公庫 |
|
|
【属性別】融資を受ける際のポイント
①不動産投資初心者のサラリーマン・会社員
できるだけ余裕をもって自己資金を用意し、比較的審査のハードルが低い提携ローンや、ご自身の給与振込実績があるメインバンクへ相談することから始めましょう。
無理のない返済計画を立て、金融機関に信頼感を与えることが大切です。
②個人事業主・自営業者
個人事業主や自営業者の場合、収入の安定性という面でサラリーマンよりも審査は厳しくなる傾向があります。
金融機関が重視するのは「事業の継続性」と「安定した収益」です。
原則として、直近3期分の確定申告書の提出が求められ、事業所得が安定して計上されていることが非常に重要なポイントです。
自己資金比率を増やし、詳細で現実的な事業計画の実現可能性を示すことで、審査を通過する可能性を高められます。
③2棟目以降の融資を受けたい場合
2棟目以降の融資(追加融資)は、1棟目の運用実績が最重要項目となります。
1棟目の物件で安定したキャッシュフローを生み出していること、空室率を低い水準で維持できていること、ローンの返済に延滞がないことが、審査における特に重要な評価ポイントとなります。
また、1棟目のローン残高と、2棟目を加えた際の総借入額が、ご自身の属性と金融機関の規定に見合っているかを再評価する必要があります。
借り換えや法人化を検討するタイミング
既に不動産投資を行っている方は、現在のローン金利よりも低い金利のローンに借り換えることで、毎月の返済額を軽減しキャッシュフローを改善できる可能性があります。
借り換えは金利差が1%以上、残りの返済期間が10年以上ある場合に有効とされます。
投資規模が拡大してきたら、法人化も検討しましょう。
法人名義で融資を受けることで、節税効果が得られるだけでなく、個人の属性に縛られず事業性で評価されるため、新たな融資を受けやすくなる場合があります。
また、相続対策として、相続資産の分割のしやすさという大きなメリットも生まれます。
オカムラホームでは、お客さまの属性や物件に合わせ、最適な金融機関・ローン商品の選定や融資戦略のサポートをいたします。
まとめ
不動産投資で融資を活用するメリットや審査基準、属性別の借入可能額の目安などを解説しました。
不動産投資の成功には、物件選びと並行して、綿密な資金計画に基づいた融資戦略が不可欠です。
融資の仕組みや審査基準を正しく理解し、ご自身の属性と目的に合った金融機関を選ぶことが、収益性を最大化するための重要なポイントになります。
オカムラホームは、お客様一人ひとりの状況に合わせた資金計画のご提案から銀行融資までしっかりとサポートします。
また、購入後の物件管理、リフォーム・リノベーション、相続・所得税対策まで、ワンストップで不動産投資をサポートします。
不動産投資が初めての方もお気軽にご相談ください。


