不動産貸付業と不動産賃貸業の違い、事業的規模ではない不動産所得や青色申告など不動産経営の基礎知識
2026.10.15
2026.10.20

不動産経営や不動産投資に関する情報を調べていると「不動産貸付業」「不動産賃貸業」という2つの言葉がよく出現するため、「違いは何?」と疑問を感じている方がいらっしゃると思います。
結論からお伝えすると、この2つの言葉に実質的な違いはなく、「どちらかが事業的規模ではない場合の呼び方」といったルールもありません。
「不動産貸付業」「不動産賃貸業」の内容は同じで、場面によってよく使われる言葉が違うケースがあります。
今回は首都圏で不動産投資家さまをサポートしている『未来の財託』が、2つの言葉の使い分け、各種書類への正しい書き方、さらには混同されやすい「事業的規模(5棟10室基準)と青色申告への影響」まで、分かりやすく解説します。
Contents
不動産貸付業と不動産賃貸業の違い

「不動産貸付業は税務上の呼び方、不動産賃貸業は一般社会でよく使われる呼び方」という違いがあるだけで、どちらも不動産を貸して収入を得る事業を指していて、内容は同じです。
どちらかの言葉を使って間違いになることはありません。
また、開業届や確定申告書の職業欄には、どちらを記入して提出しても、税務署で問題なく受理されます。
- 不動産貸付業:一般的に確定申告書・開業届など、税務署に提出する書類に記載
- 不動産賃貸業:一般的にローンの申込書・学校の書類・名刺などに記載
不動産経営や不動産投資の対象は意外と幅広いため、次にご紹介します。
※ここからは、一般的な呼び方である「不動産賃貸業」を使用します。
不動産業の事業範囲と賃貸不動産の種類

不動産業界には、不動産貸付業と不動産賃貸業のような、紛らわしい表現がたくさんあります。
そこで次に、不動産経営をご検討中の方は、不動産業の事業範囲も確認しておきましょう。
賃貸不動産の対象不動産も把握しておくと、柔軟なアイデアで収入を得る方法を考案しやすくなるため、ご紹介します。
不動産業の事業範囲
不動産業の事業範囲は、以下のとおりです。
| 事業範囲 | 内容 |
|---|---|
| 不動産の売買、交換、賃貸、管理 | 事業者自身が行う事業 |
| 不動産の売買、貸借、交換の代理や仲介 | 事業者が第三者の代理や第三者のために行う事業 |
〈参考〉総務省『分類項目名、説明及び内容例示』大分類 K 不動産業,物品賃貸業「説明及び内容例示」
不動産会社は土地開発やリフォーム事業も手掛けているイメージがありますが、実は事業内容が以下のように分かれます。
- 不動産の売買:不動産業
- 土地の開発行為(造成など)・リフォーム工事:建設業
不動産業だけを実施する場合には、事務所に専任の宅地建物取引士(宅建業に従事する者5人につき1人以上)を置くことで開業できますが※、他事業も想定している場合には、その事業内容に応じて定款を作成する必要があります。
※ご自身が所有する物件を貸し出す「不動産賃貸業(大家業)」には、宅建免許や宅建士は不要です(他人の物件の売買や仲介を行う場合に必要となります)。
ちなみに建設業は、工事規模・内容によっては、「建設業許可」「専任の技術者の雇用」なども必要です。
これから不動産業を開業する場合には、「イメージしている事業内容を、本当に不動産業の範囲で実施できるか」を整理し、必要な免許取得・有資格者の雇用なども含めて開業準備を進めてください。
※不動産を貸して収入を得る事業に必要な資格・免許は、のちほど「不動産賃貸業を始めるのに資格や免許は必要?」でご確認いただけます。
賃貸不動産の主な種類
賃貸不動産の種類は以下のとおりで、物件の種類によって、「借り手・収益性・リスク」などが異なります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 【居住用】 一戸建て、アパート、マンション、分譲マンションの住戸、商業エリアと住居エリアを併設したビル、シェアハウス、高齢者向け住宅、店舗付き住宅 など | ・需要が多いため運営が比較的安定しやすい ・立地によって需要が異なる ・取り扱う物件数が少ないほど空室リスクが収益に大きく影響する |
| 【事業用】 事務所、店舗、スタジオ、工場、倉庫、物流拠点、トランクルーム、時間貸しスペース(レンタルスペース、コワーキングスペース) など | ・長期の入居が期待できる ・賃料や需要の増減は、景気・社会情勢の影響を受けやすい |
| 【土地】 貸地、底地(貸宅地)、駐車場(月極、コインパーキング)、太陽光発電用地 など | ・建物の管理が必要ないが収益力が用途に左右される ・立地や集客の方法によっては需要がほとんどないケースもある ・管理人を置いて駐車場を運営する場合は不動産所得ではなく事業所得となるケースもある |
| 【その他】 ビルの屋上、壁面(アンテナ基地局、看板) など | ・既存の建物を活用でき、追加の設備投資が少ない ・立地・建物の条件によっては需要がない ・契約先が限られるため、解約時に次の借り手を見つけにくい |
各不動産の初期費用・収入を、こちらの記事でご確認いただけます。
〈関連ページ〉不動産投資はいくら必要・いくら儲かる|自己資金なし〜3000万円までの不動産投資方法を解説
不動産投資を検討していて、「まずは不動産の貸付に関するルールや物件の情報収集から始めたい」とご希望の方は、未来の財託へお気軽にご相談ください。
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事業的規模ではない不動産所得と青色申告への影響

次に、個人事業主として不動産賃貸業を始める場合に疑問を持つことが多い「事業的規模ではない不動産所得の具体的な内容」と、事業的規模ではない場合の「青色申告への影響」も、わかりやすく解説します。
事業的規模ではない不動産所得とは
「事業的規模」とは、不動産の貸付が税務上※「独立した事業として行われている」と認められる規模のことです。
※「税務上」とは、税金を正しく計算・申告するために、税法(所得税法など)のルールに則って判断する場面を指します。
税務上の基準として「戸建てならおおむね5棟以上、アパートやマンションならおおむね10室以上」という目安があり、これを「5棟10室基準」と呼びます。
この基準を下回る小規模な貸付(例:分譲マンション1住戸、戸建て1〜2棟など)は、「事業的規模ではない(業務的規模)」と判断されます。
小さな不動産から不動産投資を始める場合のポイントを、こちらの記事でご確認いただけます。
〈関連ページ〉不動産投資でワンルームはやめとけ派の失敗例・やってよかった派の成功例を初心者向けに解説
なお、「不動産所得」とは、家賃などの総収入金額から、「必要経費(固定資産税、減価償却費、修繕費など)」を差し引いた後の金額を指します。
「事業的規模かどうか」は青色申告へ影響する
「青色申告」とは、事前申請をしたうえで一定水準の帳簿を作成・保存することで、税制上の様々な優遇措置(特典)を受けられる確定申告の制度です。
不動産賃貸業は「事業的規模ではない(分譲マンションの1住戸のみの所有など)」場合も、青色申告を行うことが可能です。
対して、事前申請をせず簡易的な記録で行う申告を「白色申告」と呼びます。
【青色申告の事前申請の期限】
- 青色申告をしようとする年の 3月15日まで
- 事業を開始した日から 2か月以内
【青色申告の優遇措置(特典)】
- 青色申告特別控除:条件に応じて所得から最大65万円を控除できる
- 青色事業専従者給与:家族への給与を事前届出により全額経費算入できる
- 純損失の繰越しと繰戻し:赤字を3年間繰り越して将来の黒字と相殺できるほか、前年への繰戻しによる還付も選択できる
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満の資産を一括で経費計上できる(年300万円まで)
- 貸倒引当金の計上:年末の貸金合計額の最大5.5%を必要経費に算入できる
※「青色事業専従者給与」「貸倒引当金」は、事業的規模の場合のみ対象です。
「不動産投資で節税ができる」という情報に疑問をお持ちになっている方は、こちらの記事で内容をご確認いただけます。
〈関連ページ〉なぜ不動産投資で節税できる?節税額と節税にならないケースを専門用語なしで解説
不動産所得の「青色申特別告控除(最大65万円)」は、「事業的規模にあたるかどうか」によって額が変動します。
【青色申告特別控除の額】
不動産所得が事業的規模(5棟10室)の場合は、以下のとおりです。
- 最大65万円:複式簿記での記帳+e-Taxによる電子申告、または電子帳簿保存
- 最大55万円:複式簿記での記帳だが、電子申告をしない
事業的規模ではない場合の控除額は、最大10万円です。
※青色申告特別控除の額は、不動産所得の金額が上限です。(上記の額と不動産所得の金額のいずれか低い方)
〈参考〉国税庁『No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分』
なお、白色申告の場合は、特別控除が一切ありません。
そのため、事業的規模ではない不動産の貸付であっても、青色申告を選択して10万円控除を受けるメリットはあります。
不動産貸付業・不動産賃貸業に関するQ&A

最後に、不動産会社の経営者さまや不動産投資家さまから、未来の財託がよくいただく質問・回答をご紹介します。
Q.各種書類には不動産貸付業と不動産賃貸業どちらを記入すればいい?
A.多くの書類は、不動産貸付業・不動産賃貸業どちらを記入しても問題ありませんが、以下のように使われるのが一般的です。
| 書類・状況 | 記入 |
|---|---|
| 税務署に提出する書類 (確定申告書・開業届など) | 不動産貸付業 |
| ローンの申込書 | 不動産賃貸業 |
| 学校・保育園・幼稚園の書類 | 不動産賃貸業 |
| 副業で行っている場合 | 本業の職業(会社員など)+不動産賃貸業を補足 |
| 不動産業を法人化している場合の、ご自身の役職 | 会社役員 |
ただし、書類によっては指定された名称を記入しないと訂正が必要となる場合があります。
特に公的な書類は、記入例や記入ルールをよくご確認のうえでご記入ください。
Q.不動産賃貸業を始めるのに資格や免許は必要?
A.ご自身が所有する物件を貸すだけであれば、資格や免許は必要ありません。
他人の物件の売買や賃貸を仲介する場合は宅地建物取引業の免許が必要です。
また、委託を受けて他人の賃貸住宅を200戸以上管理する場合は、賃貸住宅管理業法に基づき、国土交通大臣への登録が必要となります。
※ご自身が所有する物件を自主管理する場合は、何戸あっても登録の必要はありません。
まとめ
不動産貸付業と不動産賃貸業は、どちらも不動産を貸して家賃収入を得る同じ事業です。
違いは言葉を使う場面だけで、一般的に確定申告など税務署に出す書類では「不動産貸付業」、ローンの申込書や学校の書類など、それ以外では「不動産賃貸業」を使います。
作成する書類に特別なルールがある場合を除き、不動産貸付業・不動産賃貸業どちらを記入しても間違いではなく、書類が受理されないといった問題も起きません。
不動産業には、言葉の使い方をはじめとして、さまざまな慣習や法律で定められたルールなどがあります。
不動産業の経営や不動産投資を始めるにあたって、不動産業界に精通したプロのサポートをご希望の方は、未来の財託へお問い合わせください。

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