コラム

家督相続で長男がいない|現代の家督と財産の相続順位、未登記不動産の登記手続きを簡単解説

2026.07.01

2026.07.31

相続と家系図

家督相続で長男がいない状況で、以下どちらかにお困りの方がいらっしゃると思います

  • 誰が家と財産を引き継ぐのか分からない
  • 何十年も先祖名義のままだった土地の登記が進まない

「長男が継ぐもの」「家と財産を守っていく人を決める必要がある」というご認識と現在の制度は異なるため、この記事では、現在の制度を整理して解説します。

多くの不動産投資家さまのご相談を承ってきた『未来の財託』が、未登記不動産の登記手続きもわかりやすくご紹介するので、ぜひ最後までご確認ください

家督相続は1947年廃止|制度の仕組み・廃止理由を簡単解説

家系図

家督相続とは、戸主(一家の代表者)が持つ地位と財産を、たった1人が丸ごと引き継ぐ制度です。

日本国憲法の施行に合わせ、昭和22年(1947年)5月3日から適用されなくなりました

旧民法では、亡くなった人が「戸主かどうか」で家督相続の扱いが分かれます。

  • 戸主が亡くなったとき:家督相続
  • 戸主以外の家族が亡くなったとき:遺産相続

家督制度廃止の理由は、家制度が憲法の掲げる「個人の尊厳と両性の本質的平等」に反するためです。

家督相続の廃止によって、財産の取り扱いは「遺産相続」のみとなりましたが、以下のように戸主がなくなった日によって適用される法律が違うことには注意が必要です。

相続が開始した日適用される法律相続の形
〜昭和22年5月2日旧民法・家督相続(戸主)
・遺産相続(戸主以外)
昭和22年5月3日〜12月31日応急措置法遺産相続に一本化・配偶者は常に相続人
昭和23年1月1日〜現行民法家制度と家督相続を条文ごと廃止

※昭和22年5月2日以前に始まった家督相続でも、新民法の施行までに家督相続人が選ばれていなかった場合は現行民法が適用されます。

なお、家督相続は死亡以外にも「隠居・国籍喪失・婚姻や養子縁組の取消による去家・女戸主の入夫婚姻」を開始原因として定めていました

古い登記簿に「昭和◯年◯月◯日 家督相続」と記載があっても、その日付が死亡日とは限りません。

隠居であれば届出日、国籍喪失であれば国籍喪失日が登記原因日になります。

家督相続で長男がいない場合の家督と財産の行方|現代の相続は長男優先ではない

相続問題

現代の相続に「長男優先」の規定はありません。

そして旧民法の家督相続も、条文上は「家督相続できるのは長男のみ」と定めていたわけではありませんでした

家督相続と現代の相続の違いをご紹介します。

  • 「家を継ぐ人」と「財産を相続する人」は別問題
  • 旧民法の家督相続順位と現行の法定相続順位を比較
  • 長男がいない・長男が死亡した場合のケース別の相続人
  • 遺言書・相続放棄があるときの相続人と遺留分

「家を継ぐ人」と「財産を相続する人」は別問題

現代の法律に「家督」という枠組みはありません。

「家を継ぐ」という言葉に対応する唯一の制度が、「祭祀財産の承継」です

【「祭祀財産の承継」とは】

「お墓・仏壇などを1人がまとめて引き継ぐ」という規定で、遺産相続とは別の枠組みです。

  • 承継する人は、長男である必要も、相続人である必要もありません
  • 承継しても、その分だけ財産を多くもらえるわけではありません

お墓・仏壇などを当然引き継ぐはずとお考えだった長男が実家に戻らない場合の対応を、こちらの記事でご確認いただけます。

旧民法の家督相続順位と現行の法定相続順位を比較

「旧民法の家督相続順位」と「現行の法定相続順位」の違いは、以下のとおりです。

比較項目旧民法の家督相続
(〜昭和22年5月2日)
現行民法の法定相続
(昭和23年1月1日〜)
相続する人数1人だけ
(単独相続)
複数
(共同相続)
配偶者の扱い原則として相続人にならない常に相続人になる
第1順位家にいる直系卑属
(次男→三男→長女→次女)

(亡くなっていれば孫が代襲)
第2順位戸主が届出・遺言で指定した人
(血縁不問)
直系尊属
(父母・祖父母)
第3順位父母または親族会が家族から選ぶ人兄弟姉妹
(甥姪が1代限り代襲)
第4順位家にいる直系尊属で親等の近い人
第5順位親族会が選ぶ人

なお、現行民法の法定相続分は以下のとおりです。

  • 配偶者と子で2分の1ずつ
  • 子がいなければ配偶者3分の2、直系尊属3分の1
  • 直系尊属もいなければ配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1

現行民法で定められている法定相続人の範囲を、こちらの記事でご確認いただけます。

現行制度でも1人に相続させることは可能|ただし遺留分に注意

遺産分割

遺言書がある場合、法定相続分より遺言の内容が優先されるため、「長男以外にすべて相続させる」という遺言も有効です

ただし配偶者・子・直系尊属には遺留分があり、「侵害を知ったときから1年、相続開始から10年」以内であれば、各相続人は遺留分の侵害額を、金銭で請求できます

なお、相続放棄をした人ははじめから「相続人でなかった」として扱われます。

長男が相続放棄をする場合には、残りの子で遺産を分け、子が全員相続放棄をすれば直系尊属、さらに兄弟姉妹へ順位が移ります

相続放棄についてはできないケースもあるため、こちらの記事で内容をご確認ください。

家・土地を一人に引き継がせる遺産分割協議と、もめないための生前対策

家・土地を1人が相続する方法は3つです。

  • 現物分割:そのまま1人が取得する。他の相続人の取り分が減る場合は、合意が難しい
  • 代償分割:取得した人が差額を金銭で支払う。実家や事業用不動産を分割せずに残せる現実的な選択肢
  • 換価分割:売却して現金で分ける。公平だが不動産は残らない

家・土地を1人が相続するよう生前にできる対策の選択肢は、以下のとおりです。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言書保管制度
  • 生前贈与
  • 家族信託

有利な選択は財産構成・家族構成によって変わるため、こちらの記事で判断方法をご確認ください。

首都圏で「今すぐ相続対策を始めたい」とご希望の方は、未来の財託へご相談ください

現状を丁寧に伺い、複雑な相続対策のベストな選択を提案いたします。

家督相続で長男がいない場合の「相続登記が済んでいない不動産の相続登記」

登記

ここまでは「家督相続で長男がいない場合に家と財産を誰が引き継ぐのかわからない」という疑問におこたえしてきましたが、長男がいない場合には、「先祖名義のまま放置された不動産」の相続登記についても手続きが複雑でお困りの方がいらっしゃると思います

先祖名義のまま放置された不動産は、2024年4月から相続登記が義務化され、放置できなくなりました。(過去に発生した相続も対象)

次に、相続登記が済んでいない不動産の登記手続きを、わかりやすく解説します。

  • 「相続登記が済んでいない不動産」と未登記不動産は別物
  • 未登記の土地・建物を相続登記する方法
  • 家督相続に関する手続きで必要な書類・期限・注意点

「相続登記が済んでいない不動産」と未登記不動産は別物

「相続登記が済んでいない不動産」と似ている「未登記不動産」という言葉もありますが、別物です。

  • 相続登記が済んでいない不動産:登記記録はあるが名義が先祖のままのもので、相続登記が必要
  • 未登記不動産:登記記録そのものが存在しない不動産で、土地家屋調査士による表題登記のあとに所有権保存登記を行う

相続登記が済んでいない不動産を放置すると、以下のようなリスクを抱え続けることになります

  • 売却・賃貸・担保設定ができない
  • 10万円以下の過料の対象になる

このリスクは、長男がいない家督相続でいっそう膨らみます。

旧民法では、家督を継ぐ子がいる場合は各代1人ずつの承継になるため、放置されても相続人は枝分かれしません。ところが家督を継ぐべき子がいなかった場合は、最初の相続の時点ですでに承継人が複数人に分かれます

そこから世代ごとに枝分かれするため、3代を待たずに関係者が数十人規模に広がることも珍しくありません

ご自身がどちらのケースかは、登記事項証明書と古い戸籍を取り寄せることで確認できます。

次の手順で確認していきましょう。

「相続登記が済んでいない不動産の相続登記」の手順と期限|戸籍の収集から遺産分割協議書の作成まで

「相続登記が済んでいない不動産の相続登記」の手順は以下のとおりで、2024年3月31日に発生した相続の相続登記期限は、2027年3月31日です

  • 1.の不動産を特定(わからない場合は「所有不動産記録証明制度」の活用で確認できます)
  • 2.登記事項証明書を取得する名義人の除籍謄本を取り寄せ、亡くなった日を特定
  • 3.亡くなった日をもとに、適用される法律を判定する(旧民法・応急措置法・現行法どれに適用されるか)
  • 4.不動産名義人の出生から死亡までの戸籍を、切れ目なく集める
  • 5.法定相続情報一覧図を作成する(法務局へ申し出ると無料で交付されます)
  • 6.相続人全員で遺産分割協議書を作成する(全員の実印と印鑑証明書が必要です)
  • 7.法務局へ相続登記を申請する

上記の各手続きは複雑で時間もかかるため、可能であれば専門家への依頼をおすすめします。

※のちほど「複雑な家督・相続問題を専門家へ依頼する判断基準」で、依頼するべき専門家をご確認いただけます。

「相続登記が済んでいない不動産の相続登記」を2027年3月31日までに完了できない見込みの場合には、「相続人申告登記」をすることで、「相続登記の申請をした」とみなされ、期限が猶予されます

相続人申告登記はご自身が相続人であることを法務局へ申し出るだけの簡易な手続きで、他の相続人の同意なく単独で手続き可能です。

ただしこの手続きをしても売却などが認められるわけではなく、遺産分割の成立後3年以内に相続登記を完了させる必要があります

弁護士相談

最後に、ここまでご紹介してきた家督・相続問題の対応を専門家へ依頼する場合の、専門家ごとの担当範囲などもご紹介します。

弁護士・司法書士・税理士の違い|相談内容に応じた専門家の選択と依頼先

専門家へ依頼する場合の判断の分かれ目は「争いがあるかどうか」で、「争いがなければ司法書士」「争いがあれば弁護士」が窓口になります。

資格主な担当範囲依頼する場面
司法書士相続登記の申請代理、戸籍収集、協議書作成争いがなく、名義変更を進めたいとき
弁護士交渉・調停・審判の代理、遺留分侵害額請求相続人同士が対立しているとき
税理士相続税の申告、財産評価、生前対策の設計相続税の申告が必要なとき(期限は10か月)
行政書士戸籍収集、遺産分割協議書の作成争いがなく、登記以外の書類を任せたいとき
土地家屋調査士表題登記、境界確定建物が未登記のとき、境界が不明なとき

行政書士は登記申請の代理ができず、司法書士は争いのある案件の代理ができません。

弁護士法人や法律事務所に相談すべきケース|遺留分請求、調停、相続人間の対立

次のいずれかに当てはまる場合は、最初から弁護士への相談をおすすめします

  • 「家督相続だから自分がすべて継ぐ」と主張する相続人がいる
  • 遺留分侵害額請求をしたい、または請求された
  • 遺言書の有効性に疑いがある
  • 連絡が取れない、話し合いに応じない相続人がいる
  • 相続人に認知症の方がいて、遺産分割協議ができない

判断がつかないまま親族間で交渉を重ねると、期限のある権利を失うことがあります。

無料相談・予約・問合せ前に準備する資料|遺言書、戸籍、不動産資料、財産一覧

相談の質は、持参する資料でほぼ決まります

以下の書類を中心にして関係があると思われる資料をなるべく集めて、各専門家へご相談ください。

  • 登記事項証明書(名義人と登記の日付が分かります)
  • 固定資産税の納税通知書(所有不動産の把握に使えます)
  • 遺言書(自筆証書遺言は、開封せずそのまま持参してください)
  • 手元にある戸籍謄本・除籍謄本
  • 親族関係を書き出したメモ(誰が生きていて、誰が亡くなっているか)
  • 財産の一覧(不動産、預貯金、有価証券、借入金)

未来の財託は相続対策のご提案から各専門科の手配まで、ワンストップで対応しております

首都圏で相続関連の手続きや判断にお困りの不動産オーナーさまは、お気軽にご相談ください。

まとめ

家督相続で長男がいない状況にお困りの方へ、「現代の「家督」と財産の取り扱い」「相続登記が済んでいない不動産の相続登記登記」2つの話題を整理してご紹介してきました

  • 家督相続は1947年5月3日に廃止されており、現代で「家を継ぐ」に対応するのは祭祀財産の承継だけで、遺産相続とは無関係です
  • 先祖名義のままの不動産は、2027年3月31日までに相続登記の申請が必要です。間に合わない場合は相続人申告登記をしておく

どちらも内容が複雑ですので、ぜひ専門家を活用して手続きなどをスムーズに進めて下さい。

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