土地の相続放棄ができない3パターンと相続放棄以外の選択|手続き、土地を手放す方法も簡単解説
2026.05.15
2026.05.28

相続することになった土地がいらない場合、「相続発生後の何気ない行動」や「手続きに関する知識がなかったこと」が原因で相続放棄ができない状況になるケースがあるため、注意が必要です。
相続に関連する制度は入り組んでいて全体像を把握しづらいため、今回は首都圏で不動産オーナーさまの資産管理をサポートしている『未来の財託』が、相続放棄・相続放棄以外の選択をわかりやすく解説します。
親族間トラブルを避けながらスムーズに相続財産に関する手続きを完了させるために、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
土地の相続放棄ができない3パターン|相続放棄ができない場合にどうなるのか

土地の相続放棄ができないのは、以下3パターンです。
- パターン1.「相続を承認した」とみなされる状態になった
- パターン2.最初から相続放棄の要件を満たしていない
- パターン3.家庭裁判所に相続放棄の申立が却下された
「いつの間にか相続放棄ができない状況になっていた」と後悔しないために、ぜひご確認ください。
「相続放棄ができなかった場合」の対処法もご紹介します。
パターン1.「相続を承認した」とみなされる状況になった
相続放棄は、家庭裁判所に申立の書類を提出し、受理されてはじめて成立します。
家庭裁判所が相続放棄の申立を受理する前に「相続財産の全部or一部」を処分すると、法的に「土地を相続する意志がある」とみなされ(単純承認)、相続放棄ができなくなります。
【法律上の「財産の処分」の具体例】
・相続財産を売却・賃貸借
・「相続をする」という内容の遺産分割協議書に署名・実印を押印
・相続財産の名義をご自身名義に変更
【事実上の処分の具体例】
・相続財産に手を加えて資産価値を変動させた(土地に建物を建てたなど)
・相続財産の維持費用を被相続人(亡くなった方)のタンス預金から支払った(固定資産税・雨漏り補修費用など)
また、家庭裁判所が相続放棄の申立を受理した後で以下の行為が発覚した場合、家庭裁判所の受理は効力を失い、相続放棄ができなくなります。
- 相続財産の全部or一部を故意に隠して自分のために使った
- 相続財産の全部or一部を故意に「相続財産の目録」に記載しなかった
※上記については、ご自身が相続放棄をしたことによって財産を相続することになった方が単純承認をした後であれば、相続放棄受理の効果は失われません。
上記の「処分」「隠匿」と混同されやすいものの、実は相続放棄の選択肢が残されるケースもご紹介します。
- 相続財産の賃貸借:土地は賃貸借の期間が5年以内であれば相続放棄の選択肢が残される(樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸以外)
- 相続財産の保存:ご自身が費用を負担して行う固定資産税の支払い、ごみ処理(市場価値のないもの)、雨漏り修理など
パターン2.最初から相続放棄の要件を満たしていない

以下に該当する場合は相続放棄の要件を満たしていないため、家庭裁判所に相続放棄の申立をしても受け付けてもらえません。
「書類の出し直しができないまま申立期限が切れる」といった単純なミスも含まれるため、ご注意ください。
- 相続開始を知ってから3か月(熟慮期間)を過ぎている
- 相続人の範囲を正確に把握できず、期限内に「必要書類(戸籍謄本など)」を揃えられない
- 「土地の相続放棄だけ」など、一部の財産だけ放棄しようとしている
- 相続人ではないため、そもそも申立をする資格がない(相続放棄した方の子、養子縁組が解消されているなど)
- 相続放棄の申立をする家庭裁判所を間違っている(被相続人の住所地の裁判所に申立をする必要があります※1)
- 「相続欠格」や「廃除」によって、相続権を失っている(被相続人をだました、虐待したなど)
〈参考〉
・民法:第九百十五条、第八百八十七条、第八百九十一条、第八百九十二条、第八百九十三条、第九百三十九条
・※1:家事事件手続法 第二百一条1項
ただし、「3ヶ月の熟慮期間」については、「相続人の範囲を正確に把握するのに時間がかかる」といった事情によっては家庭裁判所に延長の申立が可能です。
〈参考〉
・民法 第九百十五条
・裁判所ウェブサイト『相続の承認又は放棄の期間の伸長』
パターン3.家庭裁判所に相続放棄の申し立てが却下された
3ヶ月の熟慮期間内に家庭裁判所へ相続放棄を申立しても、以下のような場合には不受理となります(却下されます)。
- 「単純承認とみなされる行為があった」と家庭裁判所が確認した
- 申立人本人の真意ではないことが確認された(申立人が認知症の場合、親族に申立を強要された場合など)
- 申立の書類に不備があり、家庭裁判所が補正命令をしたが申立人が応じない
「単純承認」や「申立人本人の真意」について、家庭裁判所は以下の方法で確認をします。
- 申立人の自宅へ財産処分などに関する質問が記載された「照会書」を郵送し、申立人本人の署名入りの回答を確認
- 裁判所での「直接面談(審問)」で確認
- 親族や債権者からの「上申書」と「客観的証拠」で確認
なお、「不受理が通知(審判書)された翌日から数えて2週間以内」に、高等裁判所※に対して「即時抗告(不服申立)」の申立が可能ですが、即時抗告はハードルの高い手続きですので、弁護士への相談をおすすめします。
※「即時抗告」は家庭裁判所に書類を提出し、家庭裁判所を通して高等裁判所に申立をすることになります。
「土地の相続放棄をしたいのにできない」場合の対処法

上記3つのうち、いずれかに該当して「土地の相続放棄をしたいのにできない」という状況になった場合は、相続(プラスの財産・マイナスの財産どちらも相続)をすることになります。
「土地を管理できない」「固定資産税を払えない」といった場合には、早急に不動産会社などのプロに相談をして、土地を手放すための行動を始めましょう。
土地を手放す方法は、以下のとおりです。
- 売却(不動産市場で売却、不動産会社の買取サービスを利用して売却)
- 相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き取ってもらう(10年分の管理負担費用を支払う必要がある)
ただし、土地が共有名義となる場合には、所有者全員の同意がないと売却できません。
この場合には「ご自身の持ち分を他の所有者に買い取ってもらう」といった対処が現実的ですが、非常にデリケートな交渉になるため、弁護士にサポートや代理の依頼をおすすめします。
また、「土地を手放さずにビジネスを始める」という方法もあります。
こちらの記事で、田舎の土地を活用したビジネスアイデアをご確認いただけます。
〈関連ページ〉田舎の土地活用でビジネスで失敗しない条件・成功させる条件|具体的なアイデア、失敗パターンも解説
「相続放棄」「相続放棄以外の選択」の違い

相続することになった土地がいらない場合、相続放棄以外の選択肢が2つあります。
- 相続をしてから手放す
- 限定承認
相続放棄と上記2つの選択肢の違いも確認したうえで、損をしない選択をしていただけると幸いです。
「相続放棄」「相続放棄以外の選択」の違い|借金はどうなるのか
「相続放棄」「相続してから手放す」「限定承認」の違いは、以下のとおりです。
※限定承認の内容は、次の章でご紹介します
| 違い | 相続放棄 | 相続してから手放す | 限定承認 |
|---|---|---|---|
| 相続財産の取り扱い | 以下どちらも相続しない ・プラスの相続財産 ・マイナスの相続財産 | 以下どちらも相続する ・プラスの相続財産 ・マイナスの相続財産 | ・プラスの財産の範囲内でマイナスの相続財産を弁済 ・不動産は競売によって現金化or不動産の時価評価額を支払って手元に残す |
| 家庭裁判所へ申立の必要性 | 要 (3か月以内) | 不要 | 要 (3か月以内) |
法律上には、「土地だけ相続しない」といった、「相続放棄をする財産を指定できる選択肢」はありません。
「限定承認」とは
「限定承認」とは、「プラスの相続財産で弁済できる範囲で、マイナスの相続財産を弁済する」という制度です。
「土地だけ相続しない」という選択はできませんが、以下のメリットがあります。
- 借金などマイナスの財産がある場合に、ご自身の財布からマイナスの財産を弁済する必要がない
- 家庭裁判所が専任した鑑定人が評価した「不動産の時価評価額」を支払うことで、不動産を優先的に取得できるため、自宅や事業用不動産を手元に残すことが可能(先買権)
ただし以下のとおり手続きが複雑です。
- 相続人全員が共同で家庭裁判所へ申立をする必要がある(1人でも反対者がいると限定承認を選択できない)
- 財産目録作成・官報公告・債権者への通知、競売による財産の現金化など、複数の専門家が関わる
- 相続財産の中に不動産がある場合は被相続人が財産を時価譲渡したとみなされるため、準確定申告が必要で、みなし譲渡所得税の納税負担が発生するケースがある
限定承認を選択する場合には、各手続きを弁護士・税理士・司法書士に依頼するのが一般的で、すべての手続きを完了させるハードルが高いため、選択されるケースが少ないのが実情です。
相続手続きには期限があり、資産の数が多いほど手続きのハードルが高くなるため、生前からプロに相談しながら相続対策に取り組むのがベストです。
こちらの記事で、土地の生前贈与・相続について、メリット・デメリットをご確認いただけます。
〈関連ページ〉土地は生前贈与と相続のどちらが得?メリット・デメリットや税金・手続きにかかるコストシミュレーションを紹介
未来の財託は、資産管理のパートナーとして多くの不動産オーナーさまのご相談を承っております。
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土地を相続放棄・相続、限定承認する手続きの流れ・費用の目安

次に、土地を相続放棄・相続・限定承認の手続きの流れ・費用の目安(各専門家に依頼する場合の費用の目安)も簡単に確認しておきましょう。
各手続きの期限を把握するだけでも、実際に相続が発生した際の動きがスムーズになります。
土地を相続放棄する手続きの流れ・費用の目安
土地を相続放棄する手続きの流れ・費用の目安は、以下のとおりです。
- 1.相続の開始(被相続人の死亡)を知る
- 2.【3か月以内】家庭裁判所へ相続放棄の申立(被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)
- 3.家庭裁判所から照会書が届いたら回答を提出
- 4.受理審判 → 「相続放棄申述受理通知書」が届く
- 5.必要に応じて「相続放棄申述受理証明書」を取得(債権者への提示等に使用)
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 収入印紙 | 申立人1人につき800円 |
| 郵便切手 | 数百円 |
| 戸籍等取得費 | 数千円〜1万円程度 |
| 手続きを司法書士や弁護士に依頼する費用 | 3〜10万円 (書類収集や事情説明の難易度で変動) |
土地を相続してから手放す手続きの流れ・費用の目安
土地を相続してから手放す手続きの流れ・費用の目安は、以下のとおりです。
- 1.相続の開始(被相続人の死亡)を知る
- 2.相続財産・相続人の調査
- 3.遺産分割協議
- 4.各種名義変更・手続き(不動産の相続登記:3年以内、預貯金の払戻し手続きなど)
- 5.土地を手放す方法を選ぶ(通常の売却or法務局へ国庫帰属の申請)
- 6.通常の売却をする場合は不動産の売買、国庫帰属の場合は承認の手続きと管理負担金の納付
- 7.通常の売却をして利益が出た場合は翌年3月15日までに譲渡所得税の確定申告・納税
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 戸籍謄本の収集 | 数千円〜2万円程度 |
| 不動産の相続登記費用 | ・固定資産税評価額 × 0.4% ・司法書士報酬:6〜15万円 |
| 遺産分割協議書作成を行政書士or司法書士に依頼する費用 | 3〜10万円 |
| 相続税申告を税理士に依頼する費用 | 相続財産総額の0.5〜1% |
こちらの記事で、相続した土地を手放した後の確定申告をご自身でする方法をご確認いただけます。
〈関連ページ〉相続した土地や家を売った時の確定申告|自分でする流れや必要書類、申告不要なケースを解説
限定承認の手続きの流れ・費用
限定承認の手続きの流れ・費用の目安は、以下のとおりです。
- 1.相続の開始(被相続人の死亡)を知る
- 2.相続人全員が限定承認を合意
- 3.【3か月以内】相続人全員が共同で、家庭裁判所へ限定承認の申立
- 4.【4ヶ月以内】不動産がある場合、準確定申告
- 5.官報公告(2か月以上の期間を設ける)・債権者への通知
- 6.相続財産の換価、清算(競売)or先買権の行使
- 7.債権者へ、プラスの財産の範囲でマイナスの相続財産を弁済
- 8.残余財産があれば相続人が取得
- 9.【3年以内】土地の相続登記
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 収入印紙 | 1件につき800円 |
| 戸籍謄本収集 | 数千円〜2万円程度 |
| 官報公告費用 | 4〜5万円 |
| 不動産の先買権行使費用 | 不動産の時価評価額 |
| 各手続きを弁護士・司法書士に依頼する費用 | 20万〜50万円 |
| 準確定申告を税理士に依頼する費用 | 相続財産総額の0.5〜1% |
| 準確定申告によって発生するみなし譲渡所得税 | 不動産の含み益に応じて変動 |
相続放棄Q&A

最後に、未来の財託が相続放棄についてよくいただく質問・回答をご紹介します。
Q.相続or相続放棄or限定承認の判断基準を知りたい
A.相続or相続放棄or限定承認の選択は、「相続財産全体の収支で判断する」が基本です。
- 明らかにマイナスの財産の方が多いなら、相続放棄を検討
- プラスの財産が多く、いらない土地の維持費を捻出できる想定であれば、相続を検討
- マイナスの財産の全体像が不明で、残したい財産がある場合は限定承認を検討
ただし「相続財産の将来価値の見通し」など、相続時点では判断が難しい状況もあるため、専門家に判断のサポートを依頼することをおすすめします。
Q.相続放棄ができた場合、自分の相続財産はどうなる?
A.相続放棄をした人は、「最初から相続人ではなかった」とみなされます。
相続放棄をした人が受け取るはずだった財産の相続権は、次順位の相続人や他の共同相続人に移ります。
Q.借地上の建物を相続放棄できる?
A.建物、借地関係、ほかのプラス・マイナスの財産すべてを放棄する場合は、相続放棄が可能です。
Q.土地・建物を相続放棄した場合に、管理責任はいつまで負う?
A.管理責任を負うかどうかは、その物件を占有(管理・支配)しているかどうかで決まります。
現状で占有している場合(土地の上に建つ建物に住んでいる場合など)は、次の相続人が管理を開始できる状態になるまで、管理を継続する必要があります。
現状で占有していない場合には(遠方の行ったこともない山林など)、相続放棄が家庭裁判所に受理された時点で、管理責任を負う必要がなくなります。
まとめ
土地の相続放棄ができない場合について、具体的に解説してきました。
相続税は複雑な制度で、相続時の状況・相続財産の状況に応じて「相続放棄or相続or限定承認」の判断が必要です。
また相続に関する手続きには期限があるため、期限内に遺産分割協議や不備のない書類準備などを実行していく必要があります。
今回ご紹介した情報を参考にしていただき、専門家のサポートを得ながらスムーズな判断・行動をしていただけると幸いです。

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